【中小企業診断士が解説】事業計画作成ガイド(2)経営理念とビジョンと目標
事業計画書を作成したい方に、何から始めたらよいのかとお困りの方に向けて「事業計画作成ガイド」第2回目としてお伝えします。
中小企業の経営者や、これから新規事業を立ち上げようとしている方にとって、事業計画の作成はビジネスの成功に欠かせない重要なプロセスです。
事業計画は、事業の方向性を示し、今後の成長を支える土台となります。
しかし、多くの経営者や起業家は、この過程でどこから手をつければいいのか、何に重点を置くべきかに迷いがちです。
また、事業計画をつくったものの「絵に描いた餅」のように、作ってから一度も見直されないようでは、企業の成長は見込めません。
特に、事業計画には、経営理念、ビジョン、目標を明確にすることが重要です。
これらのそれぞれの違いを理解し、具体的に検討していくことが成功のカギとなります。
この記事では、経営理念、ビジョン、目標が、どのように事業計画に影響を与えるのか、そして事業計画の作成は何に気を付けるべきなのかを、中小企業診断士の目線から解説していきます。
さらに、事業計画が補助金申請にも役立つという観点からも触れますが、補助金を目的とした計画ではなく、あくまで事業の成功を目指すことが最優先であるという視点を強調します。
1. 経営理念とは
経営理念とは、企業の存在意義や価値観を明確にしたものです。
企業が何を大切にしているのか、どのように社会に貢献したいのかを示すもので、長期的なビジョンや目標に基づいています。
経営理念を策定することは、企業の意思決定においてブレない軸を作ることを意味します。新規事業を立ち上げる際にも、経営者の価値観や理念が事業計画に反映されることが重要です。
たとえば、地域密着型の事業を立ち上げる場合、地域社会への貢献や雇用創出、地域活性化などが経営理念として掲げられることがあります。この理念は、社員やパートナーとの共有にも重要で、全員が同じ方向を向いて業務に取り組むための共通の指針となります。
経営理念を作る際のポイント
- 企業の存在意義を考える: 事業を通じて社会にどう貢献したいのか、何を提供することで社会や顧客に価値を生むのかを明確にします。
- 経営者自身の価値観を反映する: 経営者の人生哲学や価値観が経営理念に反映されることが多いため、自分自身の信念を見直すことも必要です。
- 全社員で共有できる内容にする: 理念は経営者だけのものではなく、全従業員が共感し、理解できるものであるべきです。シンプルかつ分かりやすい言葉で表現しましょう。
有名企業の「経営理念」例
有名企業の経営理念をいくつか見てみましょう。
- トヨタ自動車の経営理念:「豊かな社会づくりに貢献する」
トヨタの経営理念は、制約自動車を作るだけでなく、社会全体の豊かさに貢献することを目指しています。基盤となっています。 - ソニーの経営理念:「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」
ソニーの理念は、技術革新と創造性、人々に感動を提供することを表現しています。この理念が、音楽、映画、ゲームなど多岐にわたる事業展開の原動力となっています。 - ヤマト運輸経営理念:「社会的インフラとしての宅急便ネットワークの高度化、より便利で快適な生活関連サービスの創造、革新的な物流システムの開発、豊かな社会の実現に貢献します」
ヤマト運輸の理念は、物流を通じた社会貢献を明確に示しています。
有名企業の経営理念の特徴として、以下のようなポイントが挙げられます。
- 簡潔で分かりやすい
- 従業員の行動指針となる
- 長期的なビジョン
経営理念は、企業の根幹を成すものであり、事業計画を立てる際の出発点となります。
2. ビジョンとは
事業計画のビジョンとは、企業が将来どのような姿を目指すのかを描いた未来像です。
ビジョンは、企業の成長や発展に向けた大きな目標を示すものであり、具体的な数値や期限などを持たせることで、現実的な道筋を示します。
たとえば、5年後や10年後にどのような企業になっていたいのか、どの市場でどのくらいのシェアを持ちたいのかなどを考えることが求められます。
ビジョンが明確になると、日々の業務がそのビジョンに向けたステップであることが実感でき、社員のモチベーションも高まります。また、ビジョンは社内外のステークホルダーに対して、企業がどのような方向に進んでいるのかを示す指標にもなります。
ビジョンを作る際のポイント
- 未来を具体的に描く: 抽象的な「成功したい」という表現ではなく、「3年後に年商1億円を達成し、地域で一番のサービス提供企業となる」など、具体的な数字や成果を示します。
- 現実的であること: あまりに現実離れしたビジョンではなく、実現可能でありつつも、やや高めの目標を掲げることで、挑戦意欲を刺激します。
- ステークホルダーと共有する: ビジョンは経営者だけでなく、社員、顧客、パートナーなどの関係者とも共有し、共通の目標として意識させることが重要です。
3. 目標とは
事業計画の目標は、ビジョンを達成するための具体的なステップです。
目標は数値化できるものであり、短期的なものから中長期的なものまで段階的に設定されます。
たとえば、「今期の売上目標」「新規顧客の獲得数」「マーケティング施策の効果」などが目標に該当します。
目標を設定する際には、「SMART」な目標設定を心掛けることが推奨されます。
これは、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)という要素を持つ目標を設定することを意味します。
目標を作る際のポイント
- 短期と中長期の目標をバランスよく設定する: 目先の業績だけでなく、数年先を見据えた目標も重要です。たとえば、今期の売上目標を設定するだけでなく、3年後の市場シェア拡大に向けた中期目標も考える必要があります。
- 定期的に見直す: 目標は状況に応じて柔軟に見直すことが大切です。市場環境やビジネスの進捗状況に応じて、目標をアップデートしましょう。
- 達成したら次の目標を設定する: 目標が達成されたら、その成功体験を次のステップへのモチベーションに変え、次のチャレンジに挑みましょう。
4. まとめ
事業計画を作成するにあたって、いかがでしたでしょうか。
経営理念、ビジョン、目標を明確にすることは、企業の成功にとって極めて重要です。
さらに、事業の成功には、事業計画を推進する力、モチベーションの維持や従業員に計画理念を浸透させていくことも必要です。経営理念やビジョンを再確認し、小さな成功を積み重ねることで、長期的なビジネスの成長に向けたモチベーションを保つことが可能です。
事業計画を作成する際には、これらの要素をしっかりと反映させ、確固たる信念と戦略を持って挑戦することが、あなたのビジネスを成功へと導く第一歩となるでしょう。
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