【中小企業診断士が解説】事業計画作成ガイド(3)企業概要・事業概要について

事業計画書を作成したい方に、何から始めたらよいのかとお困りの方に向けて、中小企業診断士による事業計画書の書き方をお伝えします。

第3回目は「企業概要・事業概要」についてです。

「事業計画書の作成」- 皆さんはどのような場面で直面していますか?

事業計画書の作成は、新規事業の立ち上げ、補助金の申請、融資の申請など、経営の重要な局面で求められます。効果的な事業計画書を作成するためには、共通する重要な基本があります。

世の中には、たくさんの事業計画書テンプレートが存在しますが、単にテンプレートに穴埋めするだけでは、読み手の心に響く事業計画書は作成できません。

この記事では、忙しい経営者の方のために、成功につながる事業計画書の作成ポイントを絞ってお伝えします。

事業計画書とは

わかりやすく事業計画書とは何かを説明しますと、事業計画書は、企業の目標や、事業の戦略、行動計画、収益見込みなどを記載した書類です。

さらにもっと簡単にいうと、これから会社がどこに向かっていくのか、どうやって目的地にたどり着くのか、そのために必要なお金はいくらかを、書き記したものが事業計画書です。

事業計画の重要な3つのポイント

  1. 今の会社の状況(現在地)
  2. これからやりたいこと(目的地)
  3. どうやってそれを実現するか(道順)

そのロードマップが描かれているかどうかが、事業計画書の基本となります。

事業計画書は、申請する補助金の種類や融資先など、事業内容によっても、求められる項目や重点が異なります。

企業概要と事業概要とは

事業計画書のなかでも、企業概要や、事業概要は、事業計画書の「顔」とも言える部分です。

それぞれ企業概要とは、事業概要とは、それに記載するべきものをリストアップしました。もちろんこれだけを記入すればよいというものではありませんが、それぞれ基本となる項目です。

企業概要:簡潔な会社としての事実情報を記載します
事業概要:より詳細で具体的な事業の説明をします

企業概要会社の基本的な情報
·  社名
·  所在地
·  代表者名
·  設立年
·  資本金
·  従業員数
·  業種
·  経営理念・ビジョン
·  実績
·  主要取引先
·  直近期売上高
など
事業概要具体的な事業内容の説明
·  主力事業について
·  商品やサービスの詳細
·  ターゲット市場や顧客層
·  事業の目的や価値提案
·  競合他社との差別化ポイント
·  事業モデルの説明
· 企業の強み
など

事業概要について

事業概要は、事業計画書の中でも、最も重要な部分です。
これから初めて書くという方は、中小企業診断士や、コンサルタントや商工会などを頼って作成することがお勧めです。客観的視点からアドバイスをもらえますので、地域で探してみることをお勧めします。

それでは、具体的に記載すべきポイントをまとめます

提供する商品・サービスの説明 • 商品・サービスの具体的な内容
• 顧客にとっての価値・メリット
• 期待される効果
• 競合他社との差別化ポイント
• 価格設定とその根拠
ビジネスモデルの説明 • 収益を生み出す仕組み
• 商品・サービスの提供方法
• 主要な取引先・協力会社との関係
• 営業・販売方法
ターゲット市場 • 具体的な顧客層の定義
• 市場規模
• 顧客ニーズの具体的な説明
• 想定する販売エリア
実施体制 • 組織体制
• 必要な人材と確保方法
• 設備・機器の導入計画
• 外部協力者との連携

以上はあくまでも一つの例です。ご自身の事業によって必要な内容も変わってきます。

参考の事業概要の例

さきほどの表を見ても具体的にどのように文章化していったら分からないという方もいらっしゃると思いますので、項目に沿った内容で、架空のスナック商品の事業を例として記載します。

提供する商品・サービスの説明 商品・サービスの具体的な内容
地元農家の未利用野菜を活用し、フリーズドライ加工を施したヘルシーなスナック製品を提供します無添加・保存料不使用で、栄養価を損なわずに手軽に楽しめる商品です
顧客にとっての価値・メリット
・ 健康志向の消費者に対し、簡単に野菜を摂取できる選択肢を提供
・ フリーズドライ技術により長期保存が可能で、忙しいライフスタイルにも対応
・ サステナブルな取り組みとして、食品ロス削減に貢献
期待される効果
・ 年間の未利用野菜利用率を20%向上
・ 商品リピート率40%以上を目指す
・ 地元農家の収益向上に寄与し、地域経済を活性化
競合他社との差別化ポイント
・ 地元農家から直接仕入れることで、原材料の鮮度を保証
・ 独自のフリーズドライ技術により、風味や栄養価を最大限保持
・ パッケージに農家の情報を記載し、消費者との繋がりを強化
価格設定とその根拠 1袋150円~300円に設定生産コストと市場の価格帯を考慮しつつ、手頃な価格で広い顧客層を狙う
ビジネスモデルの説明 収益を生み出す仕組み
・ BtoC:自社ECサイトとマルシェでの直接販売
・ BtoB:健康食品店や地元スーパーへの卸販売
商品・サービスの提供方法
・ 自社工場でフリーズドライ加工
・ パッケージング後、自社配送または業者を利用
主要な取引先・協力会社との関係
・ 地元農家:未利用野菜の供給
・ 加工機械メーカー:技術サポート
・ 地元物流会社:地域密着型の配送
営業・販売方法
・ SNSを活用したプロモーション
・ マルシェや地元イベントでの試食販売
・ 健康志向の商品として雑誌やオンラインメディアでPR
ターゲット市場 具体的な顧客層の定義
・ 健康志向の30~50代女性
・ 忙しくても栄養バランスを重視する若年層
市場規模
・ 国内健康スナック市場:約1,200億円規模
顧客ニーズの具体的な説明
・ 簡単に健康的な食品を摂取したい
・ サステナブルな取り組みを支持
想定する販売エリア
・地元地域を中心に全国展開を目指す
実施体制 組織体制
・ 経営責任者:代表取締役
・ 生産部門:加工技術者2名
・ 営業・広報部門:SNS担当者1名
必要な人材と確保方法
・ 地元雇用を推進し、加工技術者を新規採用
・ SNS運用経験者をリモート勤務で採用
設備・機器の導入計画
・ フリーズドライ装置:2台
・ 小型包装機械:1台
外部協力者との連携
・ デザイン会社:パッケージデザインの作成
・ 地元メディア:PR活動

あくまで架空の例ですが、このような具体的な例を見ることで自社の内容にも当てはめやすくなったのではと思います。

事業計画作成のまとめ

事業計画書の作成において、企業概要と事業概要の重要性を感じていただけたでしょうか。

成功のための5つのポイント

  1. 正確な基本情報の記載
  2. 具体的な数値による裏付け
  3. 自社の強みの明確な説明
  4. 市場での位置づけの客観的な記述
  5. 将来展望の具体的な提示

今回は事業計画書における企業概要・事業概要のポイントについて解説させていただきました。特に重要なのは、「なぜその事業なのか」「なぜ自社なのか」という点を説得力を持って説明することです。

実際の事業計画書作成では、より具体的な数値目標や、市場分析、実施計画などの詳細な記載が必要になってきますし、地域に根差した事業内容や、地域課題の解決になるような事業などにもポイントが高くなります。

事業計画書の作成は、確かに手間のかかる作業ですが、企業概要・事業概要を丁寧に作成していく過程で、自社の強みを再確認できたり、新たな気づきが得られたりすることも多いものです。
「事業計画を作ってみたら、自分の会社の良さを再発見できた」「従業員との共通認識が深まった」という声をよく耳にします。

ぜひお住まいのエリアで、実績ある中小企業診断士や経営コンサルタントの知恵やアドバイスを聞いて参考にしてみてください。

こちらのサイトからも、事業内容の具体的な部分について、お聞きできる範囲で教えていただければ、より詳しいアドバイスができます。

▼ご相談は下記の問い合わせフォームから受け付けております。

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